大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和43年(借チ)2047号・昭43年(借チ)2063号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕鑑定委員会は、本件土地賃借権の価格については、本件土地の更地価格を3.3平方米につき金三七万円と評価し、借地権価格はその八〇パーセントに相当する金二九万六、〇〇〇円であるが、賃貸人が借地権を譲り受ける場合は、第三者に譲渡される場合に賃貸人に支払われる金額に相当するものをこれから控除すべきであるとして、右借地権価格からその一三パーセントに相当する金額を控除した合計金三九八万一、〇〇〇円を相当とするとし、本件建物の価格については、復成式評価法により、算出した復成現価について、さらにその五〇パーセントを減価して、3.3平方米につき金五、九五〇円と評価し、合計四万九、〇〇〇円を相当とするとしている。

ところで、右の借地権価格が更地価格の八〇パーセントに相当するというのは、その借地権が第三者に譲渡される場合の一般的な借地権の更地価格に対する割合をいうものであつて、それは抽象的には、土地の需給関係その他の社会経済的変動に伴い、土地の価格が高騰したのに拘らず、地代はそれに比して上昇せず、その結果、完全な土地所有権の中に占める土地利用権の割合的価値が上昇したことにより形成されたものであつて、必ずしも借地権設定に当つて有償で形成されたものではなく、かえつて賃貸人の意思に係りなしに形成されたものであるといつてよい。したがつて、借地権者が右の更地価格の八〇パーセントに相当するという一般的な借地権価格を、賃貸人に対する関係でも主張できるかは、その具体的な借地関係の諸事情を考慮して判断されなければならない。

そこで本件借地関係をみるに、借地権設定にあたつては権利金等の授受は全くないので、本件借地権は対価の授受によつて有償的に設定されたものではなく、借地権の残存期間は一三年であつて、その間に借地上の建物が朽廃に至るかどうかは予測することはできないが、申立人(賃貸人)は期間満了に際しては自己使用の必要を理由に更新を拒絶する意思をもつており、相手方(賃借人)の借地利用の必要性は現在は借地権譲渡の必要性に転化したので、ただちにこれを対比することはできないが、現在のまま推移するとすれば期間満了による借地権消滅の可能性がないとはいえず(この点前記の一般的な借地権価格の評定の前提となつている借地権は、通常は、譲渡にあたつて存続期間を二〇年間に延長し、その間消滅の可能性がないものであると解される。)、また、本件借地は地代実賃統制令の適用を受けるので、一般には地代の低額な又は地代以外の権利金その他の金銭の授受を禁止されている借地として、第三者に対する借地権の譲渡価格は高くなるとも考えられるが、これは賃貸人の意思と係わりなく形成される価格であり、このような場合に、地価の上昇にも拘らず、地代の改訂がこれに伴わないため生じた差額地代(借り得分)は、借地権価格となつて賃貸人に帰属すべきであるという考えによつて、その価格を全額賃貸人に負担させるのは不合理である。

以上のような点からすると、本件土地賃借権を賃貸人に譲渡する価格は、第三者に譲渡する場合の価格である一般的借地権価格から相当減額するのが相当であると考える。そこで、本件土地の更地価格は鑑定委員会の意見のとおり、3.3平方米当り金三七万円で、本件土地全体の合計は金五五五万円とするのが相当であるが、賃借権の価格はその約六五パーセントに相当する金三六〇万七、〇〇〇円とするのが相当である。

次に本件建物の価格については、鑑定委員会の意見のように3.3平方米当り金五、九五〇円と評価するのが相当と認められるので、全体の価格は金四万九、〇〇〇円とするのが相当である。(福嶋登)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!